資本主義の矛盾が問われているもとで、いまあらためて「資本論」やマルクスが注目されています。「科学的社会主義を理論的な基礎とする」党として『新版資本論』に挑戦する方を増やし、社会変革の力となる学びの場をつくりたいと思い、神戸女学院大学名誉教授の石川康宏先生を講師に迎えた連続オンライン講座を企画しました。
日本共産党兵庫県委員会
石川先生からのメッセージ①
あらためて『資本論』が話題ですね。若い人たちにも「何が書いてあるんだろう」「一度読んでみたい」という声が広がっているようです。『資本論』は全3部のぶあつさですが、今回は8回で第1部だけを読んでいきます。読み方は「あたまからガシガシ」ではなく「おもしろいテーマにしぼって」にします。ガシガシには時間が足りなすぎるのと、話のすじだけ追うのはつまらないからです。『資本論』はかんたんに「読めた」と思えるものではありません。「わかるところがあればもうけもの」というポジティブな姿勢でご参加ください。
石川先生からのメッセージ②
『資本論』講座をやりませんか。共産党の兵庫県委員会に、こう声をかけたのは昨年九月のことでした。三月の定年退職を機会にあらためて『資本論』を読み返してみたい。そういう個人的な欲求もありましたが、同時に、よりよい社会づくりに向けて「自力の弱さ」を打開する道は「学び」をおいて他にない。そう強く思ってのことでもありました。
三月に発表された最新の「世界幸福度ランキング」で、日本は五十四位でした。とても先進国と呼べる状態ではありません。一位フィンランド、二位デンマークなど上位は北欧五カ国を含むヨーロッパの国々が多くを占めました。労働時間が短く、賃金が高く、公的福祉・医療が充実し、学費は無償かきわめて安い。こうした国々が一人あたりGDPでも世界の上位を占め、名実ともに「発達した資本主義国」となっています。
『資本論』の著者であるカール・マルクスは、資本主義発展の道筋を探求し、拡大する生産力を個人の儲けだけでなく、社会の幸福のために活用する力を労働者・市民がしだいに身につけていく――そうして一歩ずつ実現される資本主義の改良が、結果として資本主義を乗り越える新しい社会を準備すると述べました。
よりよい社会づくりへの鍵を握るのは労働者・市民の発達です。北欧には北欧の社会をつくりあげている人々がいます。そういう人の育ちについて、マルクスは「時間こそ労働者の発達の場だ」と述べました。限られた自由時間に、労働者は知的・組織的に成長する努力を積んでいかねばならない。それが資本主義を民主的に「発展」させる核心の力となる。今日の北欧の先進性はそうした取り組みの長年の成果だということです。
日々の暮らしを改善するためにも、気候危機を乗り越え、ジェンダー平等を達成するためにも、私たち自身の成長が必要です。「発達の場」であるみなさんの自由時間の一部を、ぜひとも月に一度の『資本論』講座に割いてください。楽しく学び、改革の力をいっしょに育てていきましょう。